立方箱庭

　
　昨日遅刻したからでしょうか。
　今日の夢。

　私は一般的に休日である日に出勤だ。だから普通に働いている彼とは休みを合わせるのが大変なのだが、今日は久し振りの休日に、二人でスーパーマーケットへお買い物。真っ青に快晴で気持ちが良い。鼻歌を歌いながら大仰な身振りで指揮を取りながらくるくると回って踊りながら歩く。どーーそーそそーーみふぁそらーしーどーれーみーふぁーーみれどれーーらーしどー何て言うんだっけこの曲。買い物カゴにチョコパイとチョコレートを入れる。彼は何故かターペンタインの金属の缶に入ったミートローフを二つ、カゴに入れてきた。「またーこういうの好きなんだから〜」と笑顔で話しかけたのに、彼は凍り付いた顔で私を睨んでいた。あれ。何。背が180センチ程でぶくぶくに太った、縮れた茶色の髭と髪の毛でもじゃもじゃの、サンタか妖精みたいなアメリカ人の彼。「あれ、あなた、どうしたの？」と言うが、彼は気持ち悪いものを見る目で一瞥し、足早に去ろうとする。え、どうしたの、怒ったの？と小走りでついて行くと、彼は横から現れた黒髪の可愛らしい外人の女を抱き寄せて楽しそうに話ながら歩いていってしまう。それを立ち尽くして見送りながら、あれ、あれ、何かおかしい、あれは私の彼ですらなかった…？と混乱した気持ちを落ち着ける為に、まずミートローフを元の場所に返しに行く。あたしは本当はこんなもの食べたくないんだから。チョコパイとチョコレートを買って帰る。
　下宿は全寮生の女子高の寄宿舎と言う設定なのだと分かった。一階の隅の部屋に帰って絨毯にぺたんと座り込んでから気付いたが、外が暗い。まだ日の出前だったのか。妹がベッドで丸まって眠っている。それを見て、もう一度寝直す気になれず、しばらくぼうっとするが、今日は休日で銀ちゃんと出掛ける約束をしていたんだ、その準備をしよう、と思い立つ。と。ドオオォォン…と遠くで鳴り響く轟音。どこへ行くんだっけ…チョコパイとチョコレートを鞄に入れて…違う。ドオォォン。近付く音。そう言えばあの音はなに？気付くと廊下が騒がしい。嫌な予感がして出掛ける支度では無く、逃げる支度をする。ドオォン。妹を揺り起こす。何〜と毛布にくるまったまま嫌そうな声を出す妹。「静かに。何かおかしいよ。」ドオン。近付く音。大きな何かが落ちる音？酷く慌てる。えーと何を持って行ったら良いんだっけ。それより外に出て誰かに何が起こっているのか確認した方が良いかしら。でもさっきのアメリカ人の彼みたいにあたしだけの妄想だったりしたら。
　ドン。
振動。窓の外に何か落ちた。凄まじい衝撃がきて、私は咄嗟にベッドの脇に伏せる。窓ガラスが割れる程の衝撃に吹き飛んでベッドから転げ落ちる妹。毛布で丸まってたから怪我はなさそうだけど。何かあったんだ。まるで戦争の様な。
　と、部屋のドアが開いて、綺麗なお姉さんが入ってきた。その後ろ、廊下は酷く騒がしい。走り交う人が見える。しかしお姉さんは「おみやげ、持って来たの。」と場違いにゆったりとビニールの袋を渡してくる。中はチョコパイとスフレとチョコレート。…え。私の買物…？と、また記憶が混ざりかけるが自分で止どめつつ有り難うと答え、「何かあったの？騒がしいけど。」と聞く。すると「分かるでしょう、それくらい。早く準備なさい。準備出来たら向こうの丘に集合よ。」と言ってお姉さんは出ていってしまう。やっぱりそうだと思い、急いで支度する。砲撃はますます酷い。五秒に一度は爆弾が落とされる。「四組、整列しました！」窓の外で声。あれは誰。中学の時に学級委員だったあの子。ななちゃん。支度したいのに何をしているのか自分でも良く分からない。とにかくはかどらない。遠のいていく沢山の足音。まだ整列できてないよ、まだここにいるよ……

　正体不明の轟音カウントダウンがスリリングでした。